小学校の4・5・6年と、クラス換えが無かったんです。
なもので、慣れ合いが激しく、教室にいても自宅にいる時と全然変わらない気分なワケですよ。
当時、私と もう一人のクラスメートは、「担任の先生より、頭が良い」などと思う傲慢な感覚の小学生で
先生の授業のアゲアシを取るのが大好きでした。
いつも、責め所を見つけると、お互い合図を送り合い、完膚なまでに叩き潰して、
その女の先生を泣かすか、授業ボイコットさせる事に一種の快感を持っていたと言う、
教師の方々には、最悪と思われるコンビの一つだったと思います。
で…
その日も、責め所のタネを見つけてしまいました。
見つけた途端に、お互い「責め所、発見!」とばかりに目を合わせた瞬間、「どっちが行く?」との合図の送り合いです。
程なく、私に決定。
では、手を上げて戦闘開始です。
「あ゛ぁ〜ぃ」私がダレた感じで手を上げた瞬間、
コレが合図と、クラスの みんなに伝わり、「きたー」「泣かせろぉー」「この後、何するぅ?」
と、授業ボイコットへの期待に、歓喜のヒソヒソ声です。
『また、ナンクセか?』女の感が、そー思わせたのでしょう。先生は嫌そうな目をしながら、
「JUT君、な゛に゛?」
その顔に、私自身も、泣かせる自信をフツフツと湧かせながら、意気揚々と発言です!
「あの、ちょっとココ。母さんが言ってる話は、まちがっ…」
…
…あれ?
私、今 とんでもない言葉を出したような…
直後、騒がしかった教室内は水を打つ静けさに…
その後、一転して大爆笑の渦と化しました。
結局、先生を泣かせる作戦は失敗に終わり
みんなに謝った訳ですが、「アレは、あれで笑った」
と、沢山の励ましの声を頂き、次回こそは失敗しない様、頑張る決意を新たにした次第です。
ところで、先程登場した相棒の彼は、私を心配してくれました。
「先生に『お母さん』なんて、言っちゃったんだぞ。マズくないか?
家と学校の区別も付かないなんて!とか、私を母さんだなんて、甘え過ぎ!とか…絶対、反撃来るぞ。
多分、放課後に呼び出し喰らうかも…気を付けろよ!」
今の時代とは違い、本当に教師がまだ、聖職者の扱いを受けていた時代です。相棒の話にも一理あります。
確かに、『お母さん』発言後の、彼女の一瞬ニヤついた不敵な笑みは、何かを物語ってたような気もしました。
その後も授業中、その事について、何も触れないのも不気味でした。
…警戒が必要だな…
と思いましたが、帰りの会でも呼び出される事も無く、少し疑問符状態で放課後の掃除をしてましたが
他の子達に「呼び出されないなんて、おかしいよな…もしかして、家に電話する気じゃ…」
「掃除は俺達やるから、急いで帰れよ!」なるほど、親に説教するのが効果的か…。
一目散に家に帰り、コトの詳細を親に伝えると「まさか、そんな事で…」と疑ってた母に、程なくして電話です。
前回のサラリーマン発言は、仕方が無いと思ってた母親も、今回は少し疑問を持ちながら電話を受け取ります。
母 「今、子供から話を聞きまして、毎度の事ながら、本当に申しわけなく…」
せんせー「その話の事で、なんですが…」
母が、とりあえず謝罪しようとしたら、既に話しに割り込みだしたようです。相当怒ってるんでしょうね…。
せんせー 「私、教師を始めて15年以上になりますが『お母さん』と呼ばれた事は初めてなんです!」
母 「ですから、本当に申し…」
せんせー 「教師と子供達の信頼が無くなっている教育現場で、母親の様に思われると言う事は…!」
母 「わけ…」
「教師として、この上無い幸せな事です!
私 個人的にも、未婚ですので『お母さん』などと言って貰える事に縁が無かったのもありまして…」
母 「な…」
せんせー 「本当に嬉しかったんです!本当は、学校でJUT君に話せば済む事だったんですが
他の子供の目もありますし、先生方の手前もありますので、お電話させて頂きました。
本当に良いお子さんを預けて下さり、ありがとうございました!!う゛う゛っ…う゛っ…;;」
母 「…」
電話を切って、しばらく豆鉄砲喰らったような顔をしてた母親に、電話内容を知らない私は心配して
「どーだった?」と聞くと
母、曰く 「なんだか、よく分かんないけど、先生…
泣いてたよ…。
…は?
…そ…そ…ですか…
…。
私は、諸君の知らない所で…
先生泣かせに、成功しちゃったらしいよ…。
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